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犯してはいけない吉原禁断のルール、掟を破って惹かれ合う男と女には・・・嫌われる客は今も昔も同じ

はじめての吉原ガイドブック


遊女が主役の吉原には独自の禁止事項やマナーがあった。だが、そこは男と女。ついつい破ってしまう場合もある。その時はどんな罰が待っていたのだろうか。ルールの抜け穴も含め、遊女に客が喜ばれる客、嫌われる客についても指南しよう。


 

■手を出してはいけない相手

 

 吉原の妓楼(ぎろう)では、客はいったんある遊女を買うと、別な遊女を買うことはできなかった。もちろん、妓楼を替えれば、別な遊女と遊ぶのは自由である。

 

 一見、理不尽な制度に思えるが、妓楼側の事情もあった。遊女は職住同一である。そんな住環境のもとで遊女同士が客をめぐって対立すると、妓楼は成り立たない。そのため、妓楼内で揉め事が起きないようにしたのである。

 

 【図1】には、そんな禁制を破った男が描かれている。

ほかの遊女に目移りは禁物。『風流艶色真似ゑもん』鈴木春信画/明和7年(1770)頃刊、国際日本文化研究センター蔵

 男は本来、左の遊女の客だった。ところが、右の遊女に心惹かれ、何かにつけ気を引こうとする。左の遊女が気づき、押しかけて来るや、煙管で殴ろうとしている。男は自分に非があるだけに、ひたすら謝るしかなかった。

 

 また、客の男は芸者に手を出してはならないとされていた。

 

 吉原の主役はあくまで遊女であり、芸者は宴席の盛り上げ役にすぎない。そんな芸者が客の男と寝るのは、遊女の領分を犯すことになるからである。

 

 だが、男と女の間である。さらに、禁じられるほど燃え上がるという人間の厄介な性癖もある。客の男が宴席で芸者を見染め、また芸者の方も男に心を惹かれ、深い仲になることがないわけではなかった。吉原の区画内には、そうした密会用の裏茶屋があったほどである。

裏茶屋。『両個女児郭花笠』松亭金水著/天保7年(1836)、国会図書館蔵

【図2】は、奥まった場所にある裏茶屋が描かれている。

 

 芸者は客の男と寝たことばれると、遊女から折檻(せっかん)されたし、男は詫び金を払わされた。

 

また、妓楼の若い者はけっして遊女と性的な関係を持ってはならなかった。もし、そんな事態があると、遊女は折檻され、若い者は袋叩きにされた上、吉原から追放された。

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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